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since 2007 10 24  読み書き、見聞き、したもの。など。 twitter https://twitter.com/takagi_toshi
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  少し前に内田光子のピアノで聴いた。モーツァルトのロンド・イ短調K511。
モーツァルトは嫌いだった。今でもあまり好きではないかもしれない。
客席で聴きながら、涙が流れた。一枚の写真のような、絵画のようなものが見えた気がした。

曲が特別なのか、引手が特別なのか、わからない。いま、CDを聞きながら、これを書いている。聞いてはいるけれども、いつのまにか、いま聞こえている音ではなく、あの時のコンサートの客席に舞い戻ってしまう。いい聴き方だと思えないけれども、どうしようもない。

その一枚の写真のような、絵のような、そんな世界の中は、けれども、どのように手を伸ばしても、どのようにそこに進みだそうとしても、どうしても届かない、たどり着けない、そんな世界だった。
内田光子のピアノから放たれた音は少しだけ空間を漂い、消え去る。これ以上ないようなピアニシモが零れ落ちるようにピアノから漂いだし、ふっと消える。手を伸ばしても、その手に何も触れるものはない。
音楽は、こうやって消え去っていくことで、はじめて音楽になるのだと、はじめて人に届くのだと思った。消え去ることに、本質的な何かがある。内田光子の微細なピアニシモの音がそう思わせたのかもしれない。

あの写真のような、絵のような、そんな世界も、失われることに意味があるのかもしれない。届かない世界、たどり着けない世界。たどり着く前に失われてしまう世界。そうした世界がある。失われ続けることで現在であるような、そのような時間がある。きっとそうだ。


それにしても
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